左の親指の付け根あたりの、肉球の親分みたいな部分が一日中ピクピクしてました。
今も時々ピクピクしてます。
血が沸いて肉が躍って骨が折れて夜が更けて。
朝になったら私は真っ白になっていて。
この気持ちは何だろう。
すべては肉球の親分のせいです。
もしかしたら手の中に何か入り込んだのかもしれない。
この動きは、ハムスターのお腹の動きに似てる。
飼ったことないけど似てる気がする。
でも入り込んだのがハムスターならもっと動き回るはず。
左の掌から手首に移動し、腕を通り肩を通り、顔の皮膚の下を通って右の肩に向かう。
なんかハムナプトラに出てくる虫みたいだハム。
そんでもって最終的に滑車を回すよハム太郎。
おもいきって、開いてみようか。
もしこのピクピクの原因がハムスターなら私は諦めよう。
「ハムスターっていうのは本来そういう生き物だから」と。
もしこの原因がハムスターじゃなかったなら私は諦めよう。
「ほらねやっぱりハムスターなんて入ってないよ、まぁ当然だけど」と。
私は信じます。
この左手の肉球の親分の中には、ハムスターが一匹。
血管や筋肉に足を取られ動けずにもがいている。
苦しくて苦しくて、寂しくて。
誰かに気付いてほしくて一生懸命呼吸と微動を続ける小さな命。
私の手の中にはハムスターが入っています。
私は信じています。
そんなことを考えてるうちにピクピクは止まってしまいました。
中のハムスターは死んでしまったのでしょうか。
もうあの時は戻りません。
さようなら。
ありがとう。
ピクピク。