ついに戸塚区のマスコットの愛称候補が三つに絞られた。
神奈川県民ならば知らぬ人はいないであろう。他の無知なる都道府県愚民の為にあえて説明すると、神奈川県横浜市には戸塚区という取り立てて特徴のない平凡な集落があり、そこのお偉い様が何を考えてかは県民と言えど理解し難い事なのだが(私が区民でないからかもしれないが)、昨年群集の一般人どもより区を象徴するマスコットの図案を募った。そして幾らかあったであろう応募の中からお偉い様はこれを選んだというのだ。私はこの由々しき事態を年が明けてから横浜市民である級友を通して知った。区の経済効果の期待を背負ったこのマスコットは、塩を撒けば一瞬間に溶けてしまいそうな淡い輪郭線の中、色彩検定一級でもない限り思いつかぬ斬新な配色の斑点が描かれており、区のイメージの具体化にも関わらず抽象的で曖昧な存在である。私は決して醜いと言っているのではない。人様の芸術作品を否定するなんて趣味はばかげている。だがこの先何年と戸塚区の代表として世間へのアピールをするという大事な役割を担うマスコットを、どうして区のお偉い様の独断だけで決めてしまったのかと、同県民として遺憾に思わざるを得ない。これしか応募なかったんかい。戸塚区民は勿論、モデルとされた牛や粗略な扱いで共演を強いられた梨までもが複雑な心境を隠せず困惑の表情を浮かべている。稲荷寿司の下に敷かれた葉蘭のような君たちにも、神奈川県横浜市戸塚区を訪れればこれが如何にゆゆしき事態であるかは容易に察しがつくだろう。ここでは人も建物も平屋も長屋も欠陥住宅も二世帯住宅も陰鬱な雰囲気を醸し出している。その空気は相模湾の風に乗り境川を越えて私の住んでいる地域にまで影響を及ぼしかねない程に険悪である。この街を救うのが「ひこにゃん」のような誰からも愛されるマスコットだったらどんなに良かっただろうか。かといって「せんとくん」のような話題性もない。このマスコットは、こうして雨上がりのコウガイビルの如くヌルリと現れ、せいぜい掲示物の端にでも時々思い出したかのように使われる程度で、たいした活躍もせず目立ちもせず、人知れず「戸塚区のマスコット」という地位にこの先ずっと居座り続けるのだろう。ゆるキャラという職務に任期はあるのだろうか。たかがゆるキャラといえど、ゆるい気持ちで決められては住民も困ってしまう。
あ、そうそう、その愛称候補は、
1.とつかくん 2.ウナシー 3.つかモウ
だそうです。応募総数1314点の中から選ばれたのにしては、とつかくんて普通すぎやしないか。箱に入れた葉書を無造作に手掴み方式で選んだんじゃないの。投票は戸塚区民や戸塚区勤務・通学中の方のみ。締め切りは3月19日まで。ネットでも投票できるから区民の方は是非。私はとつかくんがいいと思うな!抽選で20名にマスコットグッズをプレゼントだってさ!へぇ〜、そいつはすげぇや!
※実際の戸塚区は明るく活気溢れるいいところです。行ったことないけど。