最近になって薄々気付いてきたんだけど、食べながら歩くのは、とても行儀がわるい。
休み時間毎に何かを食べないと故郷の星から使いの者がやって来て退屈な宮殿生活に戻される私は、教室を移動する間、歩行中でも当然のごとくパンやらチョコやらをかじっていた。中でも外でも、一人でも誰かといても。高校の頃から休み時間=餌の時間だったけど、高校は無法地帯、制服着てればたいていのことは許されるような時代だから、あんまり気にしなかった。大学生になって周りに分別のある人が増えると、少しずつ自分の行為が浅ましく思えてきた。それが最近なんだ。
何人たりとも私の食事を妨げる者は許さん、世界中が敵になろうとおれは歌うぜ!なんて孤高のロッカー気質はどこへやら、このまま授業を受けたら途中でお腹が鳴ってしまう、しかし仮にもヌパッテュレノン星王国の王女がそんなはしたない事できませんわ!なんてジレンマに胸を焦がすホーリーナイト、いや平日午前。及びトワイライト。お昼は250円までという王国憲法により、たった二個のパンで間食と昼食を遣り繰りしなくてはならないから夕方までもたない。一番辛いのは昼休み、みんながたらふく食べている中で、私は午前中にかじったパンを午後に残すために、どんなにがっつきたくても全体の四分の一以上は食べられない。恐怖政治にも程がある。国の予算はどうなってんだ。
とにかく本能的な欲求を理性で抑え、公共の場を移動中の間食は自重するようになった。思えば、歩きながら食べるのはお行儀がわるいなんてことはチビッコでも分かるし、分かっていたはずなのに、いつしか何でもない顔でやるようになってしまっていた。なりたくない大人になるのってこういう事なのかもしれないと思った。あと半年で二十歳になる。いつか大人になった時に子供の気持ちを忘れないようにと始めた大掛かりな備忘録に、どれだけの事を書き残せるだろう。十代のうちにやり残した事の中で、後悔する事は何だ。このまま何もやらないまま星に帰るのか。お気に入りのパンケーキをかじりながら焦っている。