昨日の話。朝七時半、家を出る直前に、定期入れがないことに気付いた。暖かくなると思って前の晩に上着のポケットからカバンにヒョイと放り投げたような記憶があるんだけど、カバンの中身をひっくり返して探しても見当たらない。カバンの近くには箪笥に入れてもらえず放置されてる服の山があって、もしかしてこの中に放り投げちゃったのかな?有り得る、と思って山を崩してみたけれど見当たらず。あるいは放り投げた後に服と一緒に箪笥にしまっちゃったとか?
カバンの中も箪笥の中も探したけれど見つからないのに、時刻は八時に近くなっていた。まだまだ探す気ですか?いやいや、そろそろ行かないと間に合わない。九円しか入ってない財布に泣く泣くへそくりを入れて、泣く泣く家を出て、泣く泣く片道五百円の切符を買って電車に乗った。これ以上ない程に落ち込んでいた。定期入れには残り二か月分の定期と、学生証と、家の鍵と、ミルキーの包み紙が入っていた。ケース自体もお気に入りだった。これを失くすのは…痛すぎる。前の晩、改札を出た時には確かにあった。もしかして帰りに寄ったヨーカドーのトイレで落としたんじゃ…。せめて家で失くしたのであってほしい。家に着いてからの記憶が曖昧だ。昼寝なんかするんじゃなかった!
一限には間に合った。定期入れを失くしたことを話すと友達は私以上に心配してくれた。友達と過ごすうちに少しずつ定期入れの喪失を受け容れつつあった。そして昼休み。何気なくカバンを整理していると、ポケットの裏に忍び込んでいる定期入れを発見した。ポケットの裏とは、カバンの内側の布地が破れたために中の布地と外の布地の間にできた四次元空間である。何てずぼらなんだろう。多くの人に迷惑をかけてしまった。しかし見つかってよかった。私は定期入れの大切さを思い知った。これさえあれば今朝、学校の最寄り駅の改札で、ICカードをタッチする場所に切符をかざして恥ずかしい思いをすることも、なかったのだから……。
それで鬼太郎のへそくりっぽい赤面したの?