帰るのがだるい。一瞬で家に着いたらいいのに。
つまり、「ドラえもん欲しいな」と思った。ドラえもんを欲したのはこの時、金曜七時半に電車を待ってる時が初めてではない。実際に口から漏らしたことも一度や二度ではないだろう。何かあるとつい頼りたくなる。怠け者の性だ。しかしこれは今すぐに友達に伝えるほどの内容だろうか?おそらく彼女は「そうだね」と軽く笑って、それでおしまいだ。インパクトに欠ける。どうにか、パンチの効いた表現にしてやりたい。
「子供ができたら理系の道へ進ませたい」
「なんで?」
「孫にも理系になってほしい。で、何とかしてドラえもん作ってもらう」
「あぁ」
「で、孫の作ったドラえもんが、タイムマシンで今すぐ私の前に現れて、家まで一瞬で届けてくれるの」
「セワシ君的なね」
「…でも私のび太みたいに徹底したダメダメじゃないから来てくれないかも」
「来てくれたら、毎日あいだちゃんの後ろをとことこついてくるかもね」
「それはやだな」
こんな話で盛り上がっていたら、なんと本当に一瞬で家に着いてしまったのだ。姿こそ見せないが、ドラえもんの仕業だろう。ははん、粋なヤツめ。