夕方からのバイトまで時間があったため、イトーヨーカドーを徘徊していた。
化粧品売り場から少し離れたところに、入浴剤やボディクリームなどを取り扱っている某ショップがある。そこのブラシが安くて良いらしいので、何気なく見ていたら、店員さんが声をかけてきた。「お手に取ってごらんくださいね」なんて当たり障りのない文句に愛想笑いで頷いた。
平日の昼間、彼女も暇だったのか「何かでご覧になって来られたんですか?」「安くて良いですよ〜」など積極的に話しかけてくる。元々買うつもりだったので、買います、というとお姉さん、嬉々としてレジの近くから何やら機械を取り出し、「おいくつですか〜?」「ぴちぴちですね〜★肌もきめ細かい〜」と不自然に褒め出したかと思うと「お顔失礼いたします〜★ミ」と私の顔面に先程の機械を押し付けてきた。
突然のことにびっくりして、銃口を突き付けられた犯人のような心持ちでいると、お姉さんは体温計の親分みたいな機械を見せながら「だいぶ乾燥されてますね〜」とやたら抑揚をつけて言う。いわゆる水分量というやつを測っていたらしく、理想は50%らしいんだけど、私の数値は30%そこいらだった。
無頓着でずぼらとはいえ女子、結構なショックを受けていると、またいきなり「ミルクのにおいとかって平気ですか〜?」と上目遣いで尋ねてくる。え?まぁ腐ってなければ…と至極アホらしい回答をすると、狭い店内から歯医者で口をゆすぐ時のアレみたいな簡易水道を引きずり出し、棚にあった容器を片手に、正しいクレンジングと洗顔によって水分が云々と講釈を始めた。おいおい早く630円のブラシを渡しておくれ、と内心思いながら、されるがままに右手を取られ、お姉さんの華奢な手に揉まれ、ぬるぬると丁寧に丁寧に洗われた。右手がつるつるになった。
サンプルを渡すだけでなく、その場で試してくれるなんて親切…… なんだろうけど、そのお姉さんがあまりにも突然に、許可も得ず強引に事を進めるのでびっくりした。また揉まれている最中にシンデレラタイムの話になり、なるべく睡眠とりましょうね〜と言われたので「夜の仕事なもので…」と反論すると、お姉さんは大袈裟に目を丸くして「そうだったんですかぁ〜…大変ですねぇえ↓↓」とこれまた感情を込めて言う。私の言葉のチョイスもアレだけど、夜の仕事=お水と思ったようだ。「寝不足の原因はネット」だなんて言いづらくて、そういうことにしといた。以来、その某ショップの近くは何となく避けるようになった。
今日、別のカウンターで計測してもらったところ、水分56%(油分37%)という結果が出た。霧雨の中を歩いたからかなぁ。私としてはやはりこちらの結果を信じたい。きっと例のお姉さんは、私の顔を測ろうとして、うっかりさきいかの水分量でも測ってしまったんだ。そうに違いない。まったく、うっかりやさんね!
顔のシミの元?が見える機械に顔突っ込まれて
「見えますかぁ?こんなにシミの元ってあるんですよぉ〜!」
って言われたことあるよ。
「イヤ別にシミがあっても死ぬわけじゃないし、私モデルとかになりたいわけじゃないんで比較的どうでもいいです」
と無愛想も甚だしいこと言って帰ってきました。
あの積極性を草食男子に分けてあげればいいのに……!
彼女らにとって草食系はまさにカモですね。化粧品に限らず積極的な店員さんに対しては、肝の据わった対応が大事だと心から学びました。