ひとり映画館。ひとりランチ。ひとりカラオケ。
お一人さま経験値を着々と稼ぐ孤独な日々。
突発的に、ひとり旅がしたくなった。
卒論を提出した翌日。女子大生に戻りたいという母の意向の下、ついでに卒業生の姉も連れて、ゼミの教授の講義を受けに行った。
三年前受講していた頃は毎度眠っていた授業も、学費を払っていただいている母上の真横でそのような怠惰を見せる訳にもいかず、これ以上ないくらい真剣に聴いた。まさか大学生になって授業参観があるとは……。ちなみに母はノートに絵を描いたあと居眠りしていた。これが遺伝なのか?
恥ずかしいからいいよとぐずる私を引っ張り、授業後に教授に挨拶に行く母。まさか大学生になって三者面談があるとは……。ちなみに母はその後学食ランチ→カフェで一服と、私よりも女子大生らしく、キャンパスライフを満喫していた。こういうのは遺伝しないのか?
母と一緒に下校し、最寄り駅で別れ、その足で名古屋へ行った。
― 12月11日 火曜日 ―
学生一人旅といったらやっぱコレだろう。
・青春18きっぷ
今まで地味にバイト代を貯金し、チョロチョロと日用品と食べ物で散財してきたが、せっかく貯めたんだから社会人になる前にパーっと使い切ってしまいたい。学生のうちに思いっきり豪遊してやる。いっそ借金してやる。遊び人に転職する。
……そう思いながら、鈍行で移動してしまうあたりがとてもかなしい。
大学から自宅最寄り駅まで一時間、そこから名古屋まで六時間。
平日で座れるのは嬉しいんだけど……お尻が痛い。だいたい一時間ごとに乗換えがあるから、熟睡もできない。iPodも携帯も電池残量が少なく、荷物を最小限にしたおかげで暇を潰せるものもない。
私のイメージではこう、車窓を流れる寂れた夜景を眺め、大人の女性らしく粛々とした一人旅を描いていたんだけど……
部活帰りの高校生と目を合わせないよう、座席の隅っこで縮こまってお尻を気にしてモジモジしてる。そんな四分の一日だった。
・21時、名古屋上陸
永遠に着かないような気がした……。
少し迷ったが無事に地下鉄に乗り、名古屋から一駅先、丸の内駅で降りて、ようやく名古屋の地面を踏む。ふおおお〜、ここが名古屋!だれもいねえ。
そのまま朝予約した安いホテルへ直行。受付のお姉さんがそのまま村人第一号となった。村じゃないけど。
この時点で21時半。気を緩めた途端に空腹に気付く。少しだけ携帯を充電して、ベッドに腰を沈める暇もなく夜の街へ繰り出す。
・ひとり居酒屋デビュー
地元民に教わった居酒屋へ。
ホテルも駅徒歩1分、居酒屋も駅徒歩3分程度のはずなのに、競歩で15分くらい歩いた気がするのはなぜ……?
ビールうめー!
手羽先、みそ串カツ、名古屋コーチン入りつくね。とりあえず名古屋名物を片っ端から注文する。うまいっ。でも、どれも味が濃い!ケンタッキーの皮をありったけ集めて煮詰め凝縮し、おっちょこちょいのカーネルサンダースが手元滑らせてコショウ全部ぶっかけたみたいな手羽先に、ビールがすすむすすむ。
肉ばっかり頼んじゃったから野菜が欲しいなー、と思ってキャベツを頼んだのに、キャベツにかかってるタレもめっちゃ濃かった。名古屋の人はみんなこういう味覚なのか。
でもビールうめー!
来る時は早足で15分かかった道のりが、帰りは千鳥足なのに5分でホテルに戻れたのはなぜ……?
・ひとり露天風呂デビュー
やっすいビジネスホテルだけど、最上階にある大浴場には露天風呂がついていた。夜は24時に閉まってしまう。これのために急いで手羽先をビールで流し込んだのだよ。
大浴場には一人だけ先客。体を洗っているうちに退室したので、大浴場は貸し切り状態に。もちろん露天風呂も。
景色などは見えないが、その代わり星が見えた。十分だ。酔っ払って尚気分が良い。迷惑も気にせず朗らかに歌いながら足を伸ばす。
至福のとき。来て良かった。
部屋に戻って、廊下の自販機で買ったビールで追い討ちをかける。
ビールうめー!
ここで地味にやばいハプニング派生。ビール片手に携帯をいじっていたら、突然フリーズして、画面が暗くなったまま電源を切ることも再起動することもできなくなった。
ガラケーだったら(フリーズしたことはないが)イチがバチか電池パック抜いて強制終了するんだけど、スマホでやったらたぶんやばいよな?なんかどんどん熱くなってるし……え、どうすんのこれ……?
もうどうしようもないので、充電器を外して放置して寝た。翌朝、電池をすべて使い果たし、電源が落ちていた。充電して起動したら戻っていた。ほんと焦った。よかった。
二日目へつづく。