小三男子との授業中にあった出来事。
生徒「せんせー、なにか変わったの気付かない?」
私「ん?……あ、ホワイトボードのマグネット隠したでしょう?」
生徒「えへへ。さがして、さがして」
九十分もの間、おとなしく勉強し続けられる生徒は少ない。中には、目を離した隙にこんなおちゃめないたずらを仕掛けてくる子もいる。こちらとしてはあまり喜ばしいことではないけれど、授業の進み具合によっては、あえて相手の策略にハマってあげるときもある。
先生と呼ばれて一年半。こんないたずらは慣れっこだ。隠し場所もだいたい検討がつくけれど、早く見つけられてしまってはつまらないだろう。まな君(仮)のためにもここは少し大人の余裕を見せて、遊んであげようじゃないか。
私「どこだろ?ここかー」 (筆箱を持ち上げる)
生徒「全然ちがうー」 クスクス
私「もしかしてここかー」 (ホワイトボードの裏を見る)
生徒「ああ、惜しい」 プププ
私「じゃあここかなー?」 (引き出しに手を入れる)
生徒「もっとよく探してー」 ケラケラ
二十分後―――
私「……ま、まな君……本当にどこやったの……」 (床に手をついて机の下を覗き込む)
生徒「まだ見つからないの?そんなとこにないよ」 ハァ
私「チャイムも鳴ったし、降参していいかな……」 (床に頭をつけて椅子の下を覗き込む)
生徒「見つけるまで帰れないよ〜」
タイトスカートで四つん這いになり、机の脚の裏側にようやく目的物を発見しながら、初めて「宿題終わらせるまで帰さないよ!」と言われる生徒の気持ちを理解した瞬間だった。他の講師の「あいだ先生なにやってんの」感がすごかった。